作家と制作コンセプト

  髙橋洋美

  クラフト作家/社会起業家 

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略歴

 静岡県三島市出身

中央大学経済学部産業経済学科卒業

在学中、地場産業[特に繊維産業]を学ぶ。卒業後は、大手電機メーカーに就職。

その傍ら、各地の繊維を探訪。郷里三島へ転居後は、自然に恵まれた住環境

をいかし、手染め[草木染]、手編み、手縫い[和裁]などの手仕事に専念。

衰退する日本の着物文化と文字活字文化に想いをはせ制作をブックカバー

手帳カバー に絞り、今日に至る。

 [2011年内閣府/NPO法人グランドワーク三島共催のインキュベーショに                                           

 採択され、社会起業家としての一歩を踏み出す。】

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    ****  制作現場****
             と制作コンセプト****      
                                                                   

                                           


  1. 日本の伝統文化の象徴である、着物文化、手仕事文化の継承。また精神文化の象徴である文字活字文化の啓発が、私の制作を支える主なコンセプトです。

 

2. 日本人が戦後の欧米化により、生活様式の著しい変化のなかで、日常着として身に着けなくなってしまった美しい着物の染織技術を、小さなブックカバーの世界で表現し、残していくことをライフワークとしています。

 

3. 本来の着物から本の着物へ---読むこと書くこと手づくりすることを暮らしのなかでたいせつに---。をキャッチフレーズにしています。

 

 *  伊豆のお針子について---ご存じのように、伊豆を舞台にしたノーベル賞作家川端康成の代表作「伊豆の踊子」に、あやかり、北伊豆在住の手縫い作家として、何をやっている作家であるかをわかりやすく発信するため、「伊豆のお針子」といたしました。

 

 *  無生庵について---------人生哲学として、無心に生きることを旨としているのですが、車のハンドルの遊びのように人間にもあまりきっちりしない機能が時に必要です。-できれば無心に、ちょっと無精にーというスタンスが、ちょうどいい加減であり、裁ち板の前で手仕事に集中している時が「無」になる唯一の至福の時・・・このような仕事場は、いわば僧侶の庵のような空間で「無生庵・・・」といたしました。


******伊豆のお針子ーーー私の制作のしるしです。伊豆のお針子ブランドには次のタグをつけます。この度三色創りました。
                            
                                              ブランド伊豆のお針子のタグ



*******無生庵―ーー私の仕事場の呼称です。そしてこれから社会起業家として活動するための【器】でもあります。文字活字文化や手仕事文化、着物文化の啓発活動は、無生庵が主に企画・運営して参ります。【温故知新】の精神で古き良き伝統、良い慣習を現代に生きる私たちの暮らしにどのように取り入れていくかを考えながら提案します。



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リメイクは楽しい私の趣味です。
                                                                             
上記二枚の写真の右羽織は左写真の母の着物を裏にかえしてリメイクしたものです。帯は留袖を文化帯に仕立て直したもの。リメイクはとっても楽しくてつい夢中になってしまいます。



社会起業家について

 あまり一般の方は聞きなれていない肩書きかもしれませんので゛少しご説明いたします。
イギリスなどではかなり以前から社会的企業が存在し、高く評価されています。企業として単に゜利益を追求することのみにエネルギーをそそぐ、利益追求型のビジネスではなく、社会における課題を解決することを、そのビジネスのテーマとして起業し、いわゆるボランティアやチャリティのような社会奉仕のみの形態としてではなく、正統な利益を産み出しつつ、テーマとなった社会に蔓延する諸問題を解決することに企業としての存在価値を見出す社会貢献型のビジネスを志し、起業する事業家を総じて【社会起業家】といいます。
 私は、今からおよそ10年前に地元三島市で開催された、内閣府/地元大手NPOのグランドワーク三島共催のインキュベーションに採択されたことで背中を押され、それをきっかけに起業家として学習してまいりました。伊豆のお針子無生庵を立ち上げたのは採択されたときだったのですが、以前よりしたためていたものでもありました。家人が社会部の新聞記者出身のジャーナリストであったことから、門前の小僧よろしく私も家人とともに社会の様々な諸問題にアンテナを日常的に張って暮らすことが身についておりましたこともあって、単なる利益追求型ビジネスをはじめることはあまりかんしんがなく、といって草の根運動型のボランティア活動もちょっと自身にピンとこない・・・。そこの隙間にこのビジネスがあることを認識したというわけです。
 しかし、ビジネスとして利益を生み出していくことは一般の企業より困難であることと、いかにシニカルな商品をつくりだすかもむずかしいことで、両者が両輪となり船出をして順調に航海するまでには相当努力と知恵と根気が必要であることはいうまでもなく、社会貢献という高いハードルを乗り越えビジネスとして社会的価値の創造と利益追求のバランスをとって両立させていくとても難しいのがこの社会的企業というわけなのです。それを志す社会起業家が少しずつわが国にも登場していることをこの機会にどうぞ御認識ください。
 
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私の仕事と社会の課題

 今社会は単に「社会」と言われていたころから、報道などでも【国際社会】と称されることが多くなったほど、日本一国にとどまることなく国際化が常識となった時代になりました。そのため私たちの暮らしも生き方もお付き合いの方法も多様化されてまいりました。選択肢も増え、個人と個人。国と国。個人と社会の関係が随分複雑になってきたことも否めません。同時に間口が広くなった分、分単位の忙しさ、様々の事柄をクリアしていくために私たちは、いわゆる【スピード】を求められる【スピード化社会】に生きていくことに知らず知らずのうちに慣れ馴らされてきてしまったようです。そのうえ教育では運動会などで順位をつけずに皆で手をつないでゴールする・・・などおかしな気の配り方をするわりには社会は大変な競争を強いられまさに【競争化社会】が激化されているのです。
 このように書いているだけでも、ストレス多き社会となっていることが明確に認識できます。こうしたグローバル化、スピード化のストレス社会に生きる現代人は、日本に限らず海外人含め所謂心身の病【うつ病】にかかる割合が多く、特に不眠症に悩む人々はことのほか多いい状況です。現代病、社会病といわれる所以ですね。私もかつて不眠から始まり心身のバランスを大きく崩した経験をいたしました。病名はかかった医師によって様々。いわゆる【うつ病】なのでしょう。不思議なことが多い病といえば病ですが、その治療方法というのも「こころの病」とデリケートに称される程には単純で投薬一辺倒。心の奥底に潜在する悩みの根本に触れるより先に薬の処方が先行するおかしな治療が始まるわけです。むしろ治療をされているにもかかわらず、どんどん具合がわるくなっていくような感すらしていく体験をいたしました。「薬漬け」という表現が良いか悪いかわかりませんが、病院の薬局の待ち時間に大量の薬袋を大事そうに、それこそ抱えて持ち帰る多くの患者さんを目にする度に憤りと疑問をいだきながら私の通院生活はしばらく続きました。しかしその時のその光景は奇異な映像として私の脳裏にクローズアップされたまま今日まで残っています。いったいこのような病の治療とは何なのだろう真剣に考えさせられた経験でした。
 私の夫は社会部出身のジャーナリストですが、このことが私のこの病気を克服するのに功を奏する一因でもありました。観察者として掘り下げて治療に当たらない医者より正しい【目】を持っているからでした。共に闘ってくれたといえましょう。その助言から薬漬けにされる前に脱出を計ったのです。この「脱出劇」は大成功だったのです。病院と薬から離れ、日々日常の当たり前の暮らしを取り戻すうちに驚くほど私の症状は回復し気力も体力も元に戻り、今ではこのように仕事も持ち、家事もこなしむしろ若い頃より充実した生活を送っている毎日といっても過言ではありません。しかしながらその間、自分なりの治療に値する他の努力が存在しました。それが現在の仕事に関わる全ての事柄・・・【読むこと、書くこと、手づくりすること】なのです。
 手仕事は「和裁」は勿論ですが、手編み、手染め、そして園芸。植物観察も染色に関連して伊豆中心に歩きました。心の奥底を見つめなおそうと自分自身で多くの書物とじっくり対峙しました。そして手料理。これは健康のためには必須の作業といえましょう。書くことは毎日ではありませんが適度な日記をつづけ、母の供養に伴い筆を持って写経をし、楽しもうと(写経は苦しい作業でもあるかもしれません。)筆で絵を描いたり・・・。私はこれらの事を一生懸命【私流治療法】としてあたったのです。その結果が今日に結びついているのです。人生とは【万事塞翁が馬】なのですね。実体験でそう思います。ですから自身に降りかかる火の粉は自身ではらう努力は惜しんではならないのです。この経験で私は大変精神力が強くなりました。通る道だったのでしょう。
 心の病とやらは治せます。いや治ります。ある意味で【脱皮】なのです。自分が成長するためのひとつの工程であり、行程なのです。その為に必要な環境は【らしくあること】を見出すことではないかと考えます。今グローバル社会と称し国際的規模で物事を考え進めていかなければならない環境に世界の人々は身も心も置かざるを得ない状況です。この国際化とは世界のひとびとが同じ基準で生きていくことではありません。その国らしさ、その国に生きる国民らしさ、そして何よりその人らしさを大切に培いながら日々暮らすことなのではないでしょうか。そして多くの国々、人々とそのことを大切に思いながら交流していけば良いのであり、決して一つに同化することではないと私は思います。その根本の【らしさ】が現代社会で軽んじられてしまっているのではないかと考えるのですがいかがでしょうか。とどのつまり【自然体を保つ】生き方をしていくことだと考えます。自然を損なうからどこか不具合が生じるのですからね。病は不具合のなせる業でしょうね。
 私はこのようなことを社会にアピールして参りたいと社会起業家としての歩みをブックカバー・手帳カバー制作を通して始めました。このような社会に蔓延する不可思議な病が少しでも減少し心身ともに健やかな人づくりに貢献できればうれしく存じます。またつたない文とともに体験記ごとき話に傾注してくださりありがとうございました。わたくしの手縫い制作によるブックカバー・手帳カバーに特化した作家としてのコンセプトの礎を少しでもご理解いただけましたら幸甚でございます。

 私の療養中の作品・・・【読むこと・書くこと・手づくりすること】の実践の日々でした。参考までにアップロードいたします。

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 幸いにもこのように現在では辛く重苦しい日々が嘘だったように元気でくらしております。病気と真剣に向き合い、自分なりに「努力」した結果がこんにちあるということですが、なんでも経験しておくことは成長に繋がることだと思います。今仕事に重点をおく暮らしのなかで一軒家からマンション暮らしに変わりましたが、当時から好きだった「園芸」の魅力は忘れられず、マンションのベランダでも
ガーデニングよろしく少しだけ花や観葉植物を育てています。愛は与えるものであり、与えることで自分も育つと確信を持って言えることですね。そういえば犬も育てました。いえ、育てられたのかもしれません。動物や植物と、ともに生きるくらしは人のこころを豊かにしてくれることをこの時学習したといえるでしょう。

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   17年家族同様共に暮らした柴犬のリョウ。とても愛情豊かなワンちゃんでした。その存在たるや観音様でしたし、我が家の守り犬でした。音楽が大好きで(私が好きなので一緒に聴いていることが多かったのでそう思います。)死んだとき遺影を飾るのに夫が買ってきてくれた写真立てです。ここに納まって引き続き私たちを見守っています。



          
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     この時【読むこと】沢山いたしました。そのなかの一部、ご紹介します。

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 竹久夢二の歌の絵本・・・というとてもきれいな本です。懐かしい歌のCDが付いています。東京大学前の【弥生美術館】で購入しました。とてもいい本です。
   

 

 

             竹久夢二(大正時代)
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 以上作り手のプロフィールとしてなるべくわかりやすく今日にいたるまでの様々な事柄をまじえ記しました。私は本来あまり写真を撮られたりするのが苦手なので自分の写真をご紹介するなどは甚だ恥ずかしいところなんです。実は最近お会いした方に、「ホームページの写真は昔の写真でしょ。でも今の方が若々しいですよ。」なんて言われてちょっと気をよくしているのです。単純ですね。それでは最近の画像を恥ずかしながらアップしてひとまずこのページを締めくくります。
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