庵主のつぶや記

                庵主のつぶや記 4
 箱根は新緑のさわやかな季節を迎えました。桜からつつじへ花のにぎわいも移り変わっているところです。何よりも風薫るという如く新緑の季節の空気はほんとうに良いものです。箱根のつつじの名所として名高い「蓬莱園」という庭園までの道程が私の散歩の定番コースとなっているのですが、鮮やかにつつじが咲き始めています。もともと歴史ある三河屋旅館さんの庭園だったのですが、今は箱根小涌園藤田観光が管理・運営をされています。三河屋さんは初代創業者榎本猪三郎・恭三親子のご尽力で宮ノ下大火に見舞われたこのあたりの地を買い取り、旅館を開業。現在の有名な小涌谷温泉を誕生させたという歴史があります。その時の旅館の庭園が蓬莱園であり、東京よりつつじを移植しつつじの園を造成。その後も
無料開放され地元の住民もツーリストもつつじだけでなく春は梅や桜、初夏はつつじやサツキ、秋は紅葉と季節の風情を楽しませていただいております。ありがたいことです。
 夫の車いすを押して散歩できるコースというと、坂道の多い箱根では限られているのですがこの蓬莱園までの径はわずかな上り坂ではありますが、季節を感じながら夫と散歩できる唯一のお散歩コースでした。庭園は階段状に昇ってお花をめでる踊り場や水音が心地よい小川の流れとかを楽しみながら三河屋さんのある一号線までたどり着くことができます。ただ、夫と私は入り口から平坦な庭園内を一周するというコースでした。それでも麦茶を飲むために一服した、いつもの場所など、思い出となるこの庭園には感謝の気持ちでいっぱいです。この径と庭園だけは今でも夫と一緒に散歩しているような気持になれるからです。中国の神泉思想に説かれる不老不死の薬を持つ仙人が住む山を蓬莱山ということは有名な話ですが、仙人の住む園として、ここに来れば夫が生きているように思うというのはその説に充分あやかっているような気が致します。
 夫はひとから仏に成りました。仏。仏に成るということは突き詰めればその解釈はそう簡単に説明することは私のような俗人にはできないことですが、仏教では万人成仏といってすべての人々が仏に成ることができるのだそうです。仏というのは真実に生きる人なので「真実の自己を実現した人」あるいは「本来の自己を実現した人」を指し、真実に生きる人になったとして、悟りをひらいたとか仏に成ったとかいうのだそうです。ひとつわかることがあります。この世では真実に生きることはなかなかできないこと、本来の自己を実現することは難しいこと。だということですね。
 浄土教では西方の阿弥陀仏の浄土に往生し、人から仏に生まれ変わり真実の自己になる。ということが往生成仏ということならばその仏を拝むこと「南無阿弥陀仏」は尊いことですね。現世に身を置く未熟な私は自己実現をした仏となった夫と共に蓬莱園までの散歩道を今日も楽しく歩いてまいります。合掌。

       10地蔵.PNG 蓬莱園のつつじ.PNG
         IMG_20220407_064253894.jpg 髙橋洋美の肩書.jpg